模型製作について その2 塗装で「金属」を表現する1

 武漢コロナの影響で、在宅勤務2か月目で、さすがに飽きましたw

 元々 直行直帰の勤務体系なのですが、客先も ほとんどが訪問は NGなので・・

 

 Stay Home ですし、模型を作る人が増えてくれれば嬉しいですね。

 自分も出戻り当初から、いろんな方のブログ等で勉強をさせて頂いたので、今までの経験 や 技法、テクニック、考え方 などを、少しずつ残しておこうかとw

 なにかの参考になれば ってことで。

 

 あまり 大きな声では言えないですけど、模型のインスト(説明書)の塗料の指定色 通りに作ると、凄くオモチャ感のある仕上がりになりますw

 「機関銃の銃身 ⇒ ガンメタル」 で塗れ 的なw

 なぜリアルに見えないのか?

 それは現実では存在しない事象で、無意識に「不自然さ、違和感」を感じてしまっているから。

 人間の目は凄い高感度のセンサーですし、ちょっとした不自然さ、違和感を逃さない。

 無意識ですけど、生きてきた経験上 見たことのある物が 違う色、質感だと 違和感を感じる。

 私の作品は、よく「隙が無い」って言われますが、「違和感を消す戦いw」の結果、隙が無くなるのだと思いますね ^^

 自分が見て イヤな仕上がりは 無理なので、極力 違和感は排除するよう努力します。

 

 空気中で唯一「酸化」しない金属は 「金(Au)」だけです。

 金(Au)は錆びない。

 でも、 他の金属  特に模型製作で よく表現する鉄系(Fe)は、自然界では化合物(酸化鉄 等)という形でしか存在しません。それが鉄(Feイオン)にとって 一番安定した形 だからです。

 人間が製鉄所で 酸化鉄を還元(酸化の反対。酸素を奪い取る反応)して「鉄(Fe),鉄合金」にすることで、鉄の金属の塊 が存在しているわけです。

 変な言い方をすれば 金属の鉄の塊は 鉄にとっては、凄く居心地の悪い 不安定な状態ということです。

 だから安定した形になりたがる。

 酸素と くっ付いて酸化鉄(赤錆)になることが、鉄にとっては居心地の良い安定した形な訳です。

 だから 空気中で すぐに錆びるw

 

 仮に、綺麗な鉄の表面が空気中でどうなっていくか と言えば・・・

 いきなり オレンジ色に錆びることはないです。

 まずは、表面が くすんで きて ツヤが無くなってくる。色も少しグレーがかってくる。 

 なので、私はチッピングする時に ジャーマングレー系(調色した)で鉄金属の色を表現します。

 そこに水分があれば、軽く錆びるので ジャーマングレー系の上に、錆び色のピグメント等を滲ませたりします。

 

1/35 TAMIYA  M1A2 SEP TUSK II

 牽引用ロッドが 何かにぶつかって 塗装が剥げ、部分的に錆びた状態を表現 

 情報量を増やす方法として、全て「均一にしない」というのが重要となります。

 

 傷の出来た時間も それぞれ違うわけで・・・

 「剥げて あまり時間が経ってない部分」 なら ジャーマングレイ系の色

 「古傷」なら 錆びも浮いて赤黒く、その錆びが 雨水等で滲んで、周りの塗膜にも錆び色が 広がった状態。チッピング自体を錆びた鉄色(ジャーマングレイ+赤味の強いブラウン系)で行い、下地を透かして錆び色を滲ませる場合、エナメルのクリアーオレンジ、クリアーレッドを混ぜて塗ったりしてます。ツヤの調整は自家製つや消しクリアーでw

 「新たに削れて綺麗な鉄素材が出ている部分」は 5Bの鉛筆で擦り 金属色に

 「傷が付いたけど下地の鉄までいかなかった場合」は 白+車体色 でチップ

 この部分だけ見ても いろんな表情 があるわけです。

 情報量が多いから 見てても 飽きないw

 そして、この「牽引ロッドは 金属製 」だと、見ている方の心理に刷り込むことで、戦車全体の重量感、硬質感を演出しています。

 色を重ねたり、下地の色を透けて 見せると よりリアルに 見せられると思います。

 

 1/35 TAMIYA M1A2 SEP TUSK II

 砲塔の荷物ラックでも チッピングでいろんな表情を付けてます。

 ラック側面に弾薬箱を括り付けている針金が錆びて ラックにも その錆びが移ってるところ だったり、予備履帯が擦れて ラックの塗装が剥げて錆びが浮いてたり、塗装が軽く削れて その中の一部だけ素地の鉄系が見えてる ところだったり。

 変化を付けると 情報量が増えますし、間も モチます。

  

  

 最初の話に戻って・・・

 インストだと  「機関銃の銃身 ⇒ ガンメタル」 で 塗れ

 ですが・・・

 機関銃、小銃、重機関銃の実物って どんな色してます?

 

 機関銃の代名詞的な 大ベストセラー M2機関銃 の実物写真

 ガンメタル色じゃないですよね?w

 半光沢の「 黒系に近い暗いグレー」色。

 では、この色はなにか? というと・・・

 鉄 よりも さらに錆びやすい 「炭素鋼(鉄系合金)」を錆びさせないように 表面を 「リン酸塩処理」(化成処理の一種)した「リン酸塩皮膜の色」です。

 一般的には「パーカーライジング」処理と言われてます。

 

 鉄、鉄合金を使いたいけど、錆びては困る ってことで、化成処理(リン酸塩処理 、黒染め 等) や めっき(防蝕のための亜鉛めっき、ニッケルめっき)、塗装(下地処理で化成処理を行うことも)等の 「表面処理」を行う訳です。

 

 この辺りのことが 私の仕事(表面処理関係) でもあるので、ウルサイ訳ですwww

 

 では どう塗装すると リアルに見えるか?

 結構 簡単ですw

 ジャーマングレイ+黒+クリアー(半ツヤ程度)で塗装して、墨入れして、パーツのエッジ等を5Bの鉛筆で擦ればOK w

 黒に近いグレーで 少し青み掛かってると最高です ♪

 削った5Bの芯の粉を 綿棒に付けて 軽く擦るのも アリです。

 これで見慣れた 銃器の色 になります。

 もちろん OVMなどの車載工具も同様でいけます。

 

 1/35 TAMIYA  M1A2 SEP TUSK II 

 写真のM2 機関銃(車長キューポラ)も M240機関銃(装填手ハッチ)も 上記の方法で塗装してます。(M2の銃身は真鍮製パーツに置き換えてます M240はキットのまま)

 で、ここでも 一工夫w

 せっかくM2機関銃の弾薬ケースが開いていて、弾薬までモールドされているので、ここは「見せ場」な訳です。

 ここで、「真鍮色(金色)」一色に塗っては「芸」が無いし リアルでも無いw

 手間は掛かっても マスキングして 弾頭(カッパー系)、薬きょう(真鍮系)、弾帯ベルト金具(黒に近い濃いグレー系)で塗り分ける(吹き分ける)。

 これだけでも凄いリアルですし、アイキャッチにもなる。

 装填手のM240はタミヤのキットのままだと、弾薬ケースは閉ったままのモールドですので、せっかくフィギュアは銃を構えてるのに、それじゃ撃てないw

 なので、ケースを開けた状態に加工し、Live Resin の7.62mm弾帯を追加して、撃てる状態に。

 

 メタリックな塗装をする場合、下地が大切です。

 まずは、ちゃんと素材のプラを紙ヤスリ等で、均して極力 ツルツルにする。

  (塗膜は乾くと 凄く薄くなるので、表面の荒れ等が浮き出てくる)

 下地塗装は メタリックの塗料の色味にも影響があるので、必ずしもコレ!ってことはないですが、この時は下地に「光沢黒サフ」を吹いてます。

  (明るめの金属色にしたい場合は 下地を光沢白、光沢グレーにするのもアリです)

 で、次は クロームシルバー的な 明るい白系メタリックで塗装してます。

  (これも下地w)

 その上からマスクして 弾頭(カッパー系)、薬きょう(真鍮、金色系) をそれぞれ吹いて、乾燥後、マスクして 弾帯金具(黒に近い濃いグレー)を吹く。

 墨入れしてから、弾帯金具の縁を5Bの鉛筆で擦るw

  

 もちろん メタリックの塗料の選定も大事。

 メタリック塗料の中に入ってる金属粉の大きさで 緻密な金属光沢になるか、いかにもメタリック塗料!といった粗い皮膜なるか 決まりますのでねw

出来れば エアブラシで吹いた方が良いです。

筆塗りだと どうしても・・・ねw

 

1/35 TAMIYA  M1A2 SEP TUSK II

 

 物のリアルさ って「色」と「質感」「ツヤの具合」で 決まります。

 だから、色はもちろん 「表面の質感」「ツヤの加減」 を気を付けた方が 良いです。

 色、質感、ツヤ、が合っていれば、重量感、硬質感 等 を出すことも可能ですので。

 

 ミリタリーモデル = 全てツヤ消し ではないのでね・・・

 これやると  いかにも「プラモデルです!」になってしまうのでw

 

 一番難しいのは カーモデル等の ロールバー や クロムめっきされたパーツの塗装での再現です。

  この辺りの話はまた 次回にでも。